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神谷佳成監督が語るディレクター道「『1億人がドカンと沸く』 それが CMの快感」

(2016年12月05日 掲載)

映像クリエイターのためのコミュニティイベント「チャレンジャーdeないと」4回目が11月7日に行われた。この日のトークショーに登壇したのはヒットCMメーカーの神谷佳成監督。ここだけで語った「神谷流 CMのつくり方」とは?

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■プランナーからスタートして演出家へ

セガサターンの「せがた三四郎シリーズ」やアイフルの「チワワシリーズ」、最近ではジョージアの「世界は誰かの仕事でできている。」など、数々の人気CMを制作してきた神谷佳成監督。カンヌライオンズを3度受賞し、通算700本以上のCMを制作した経験を持つヒットメーカーに、"神谷流CMのつくり方"を公開してもらった。

神谷監督のキャリアは、CMプランナーから始まっている。「大学時代、映像に興味があったので映像制作会社に入ったんです。でも、そこで演出をやろうと思っていたら倒産してしまって...。そのときに第一企画(現・アサツー ディ・ケイ)からプランナーとしてならOKと言われたので入社しました」。

プランナー職で入社したものの、当時から神谷監督の志望は演出家。そのため、当時は、企画を考え、クライアントにプレゼンし、通ったCMを自分で演出し...とすべてを自分で行う作戦を取ったという。「自分でプランニングして演出までしないと、自分に演出の仕事が来る流れをつくれないと思ったんです」。この時につくったCMが評判になり、それを機にフリーの道へ進む。今回は、フリー後に制作したCMを神谷監督に3つ選び解説してもらった。

■神谷監督が選んだCM3選 せがた三四郎、ポッキー、ジョージア

1つ目に流れたのは今から約20年前、神谷監督がフリーになった直後に制作したセガサターン「せがた三四郎」のCMだ。黒沢映画の登場人物・柔道家の姿三四郎にかけた藤岡弘、が演じる「せがた三四郎」が登場し、セガサターン以外の遊びに興じる子どもたちに背負い投げなど容赦ない制裁を加え、「セガサターン、シロ!」の決め台詞を放つ、当時の大人気シリーズだ。「僕はバカバカしいことを突き詰めてやるのが大好きなんです。このCMはその典型で、その後の自分の演出のベースになっています」。

次に演出家として転機となったCMは、新垣結衣が街中で踊るポッキーのCMと、カンヌライオンズも受賞したつばさ証券の忍者が登場するCMだ。「当時まだ無名だった新人の新垣結衣さんがポッキーを持って突然踊り出し、街に出ると皆もついてきて踊り出す...という設定でおかしさを演出しています。ポッキーは定番商品ですが、新鮮に見せたいということで、新人タレントを使うことになりました。しかしそれだけではCMのタレント力が弱くなってしまうので、そこを楽曲のORANGE RANGEのメジャー度でカバーするという計算をしたんです」。

つばさ証券のCMではマヌケな行動をとる忍者にスポットを当て、パートナー選びの重要性を訴えた。「登場する忍者の掛け声は実は僕の声です。プランナーの人たちに演出コンテを説明する時は、僕自身がいつも通しで演技して説明するんですが、だいたい完成した作品よりもそっちの方が面白かったと言われるんです。エステWAMのCMのプレゼンでは、そのまま『監督が出ればいいんじゃないか』という話になり、CMに出演したこともあります(笑)」。

最近のドコモのdポイントシリーズでも、キャラクターのポインコの声をまず自分の声で吹き込み、その声を元にマペットを動かし、最後にお笑い芸人のロッチに吹き替えてもらっている。「声で雰囲気をつくりこんで伝えることで、マペットを動かす演者の人の動きが変わります。より自分のイメージに近づけるための方法です」。

最近手がけたCMとして、最後に紹介したのは、缶コーヒー ジョージアのCM。山田孝之が営業マン、大工、海の家の従業員など、さまざまな職種を演じるシリーズだ。「完璧な営業マンや大工さんが出てきて、『世界は誰かの仕事でできている。』と普通にカッコよく演じると、作っている方も気恥ずかしい。それに、きれいごとに聞こえて共感されないと思いました。僕自身、とても俗な人間なので、どこかダメな人間じゃないと愛せない。そこは山田くんも同意してくれて、『全員欠点のある人のシリーズにしましょう』と話をして。そうすることで、愛されるCMになるんじゃないかと考えました」。

どこか愛すべきところを入れる、というのは他のCMでも心がけている点。「ポッキーのCMでも、踊り慣れていないガッキーが一生懸命にギリギリ踊れている感じだったり、ポインコのCMだったら、人が動かしているので多少動きがブレていたり。きちんとできているけれど、愛すべきところがあるようにしたいと思っています」。

■CMは1億人を相手にできる仕事

神谷監督は、企画を受け取った時点で、自分の中で勝負するポイントを1つに絞り込むという。「ひたすらかわいくする、このオチを絶対に面白くするなど、自分の中で決めています。それは僕にとっては絶対に負けてはいけないギャンブルのようなものです。元々僕はすごくギャンブラー体質で、競馬やパチンコでは運がないのでよく負けるんですが(笑)、幸いなことにその分CMは当たる確率が高いみたいです」。

ギャンブルと言っても、一点突破の一点を決める過程は、競馬の予想のようにとことん"理詰め"だ。「企画、タレント、音楽などの要素を頭に浮かべながら、企画が弱ければタレントを強くするなど、何を加えれば強くなるかを徹底的に考え抜きます。広告は注目されて初めて"広告"になります。1人でも多くの人に受けたいので、アップをここで入れる、踊りも変わったものにする、脇役との絡みで可愛さを強調する...などと積み重ねていって、最終的にバーンと突き抜けたらいいなと。各要素を頭の中でパズルのように何度も組み合わせ、ぼーっとテレビを見ながら想像して、理想の15秒が組み上がるように構成しています」。

最後に、神谷監督はCMの仕事について次のように話した。「映画はどんなに興行成績がよくても数人に1人が見る程度ですし、テレビ番組だって視聴率20%でも5人に1人です。でもCMが国民的ヒットになれば、"日本中の誰もが知っている"状態になる。CMは1億人をドカンと沸かすことができる仕事なんです。それは僕にとっては大きな快感だし、次の仕事に向かうエネルギーにもなっています」。

神谷監督のディレクター道
・企画を受け取ったら、自分の中で勝負するポイントをひとつに絞り込む。
・どこかダメな要素や欠点が入ることで、愛されるCMになる。
・企画、タレント、音楽などの要素をパズルのように掛け合わせ、結果が最大化するように考える。


■神谷佳成(かみや・よしなり
at1202000171.jpg1987年慶應義塾大学法学部卒業後、テレコムジャパンに入社。その後第一企画(現アサツー ディ・ケイ)を経て、1997年よりフリー。主な仕事にセガサターンせがた三四郎シリーズ、アイフル チワワシリーズ、新垣結衣・忽那汐里出演の江崎グリコ ポッキーチョコレートシリーズ、最近作に日本コカ・コーラ ジョージアシリーズ、NTTドコモ 料金シリーズ・dポイントシリーズなどがある。つばさ証券などでカンヌライオンズを3度受賞。ダンスノットアクト創立メンバー。

(ブレーン 編集部/宣伝会議 AdverTimes)

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