業績V字回復の秘訣は、リーダーとして、正しいことを正しくやるというシンプルな姿勢だった/オークローンマーケティング 加藤裕一郎さん(後編)

業績V字回復の秘訣は、リーダーとして、正しいことを正しくやるというシンプルな姿勢だった/オークローンマーケティング 加藤裕一郎さん(後編)

テレビ通販で有名なショップジャパンを運営する、オークローンマーケティング。

同社は、世界中からユニークな商品やアイデアを発掘し、ショップジャパンのオリジナル商品として改良を加え、様々なチャネルを通してお客様に販売しています。
商品開発からマーケティング、チャネル運営、コールセンターやロジスティックに至るまで自社で一気通貫して行っています。
社会現象を巻き起こした「ビリーズブートキャンプ」をはじめ、「トゥルースリーパー」や「スレンダートーン」といったヒット商品を数多く輩出しています。

2017年に入社し、確実にヒット商品を見出し、ロングセラー商品に築き上げるシステムを導入。
さらに社員のモチベーションを上げることで、業績のV字回復を成し遂げた、加藤裕一郎さんにお話を伺いました。

写真:株式会社オークローンマーケティング
株式会社オークローンマーケティング加藤裕一郎さん
株式会社オークローンマーケティング 執行役員 ショップジャパン事業統括 兼 Oak Lawn Marketing International Inc. CEO

慶應義塾大学商学部卒業後、1995年にプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社 (P&G)に入社。
ヘアケア、柔軟剤のカテゴリーなどにおいて、ブランドマネージャーを担当。
その後、各外資系のリーディングカンパニーでマーケティングやブランディングのディレクターを歴任、ビジネスの伸長に貢献してきた。
2017年5月に株式会社オークローンマーケティング入社。
同社のブランド「ショップジャパン」事業統括から人事計画まで幅広く従事。
【 目次 】
わずか数ヶ月でV字回復。しかも、ほぼ残業なし。
自分のプランやアイデアが、マーケットにインパクトをつくる・・・これこそ、マーケティングの醍醐味。
「正しいことを正しくやる」。
常に「今が一番楽しい」と思える、会社にしたい。
「個人的なエピソードを語れる体験」をしてほしい。

わずか数ヶ月でV字回復。しかも、ほぼ残業なし。

ーオークローンマーケティングに入社されてからわずか4ヶ月で、業績がV字回復。どんなマジックを使われたのでしょうか?


特別なマジックは使っていないんですよ(笑)。

入社してまもなく、社内のメンバーから、「今後どうしていくべきですか?」と聞かれた時、私は特に指示などは出さずに、「わかりました。では、月内に目標の数字を達成してください」とだけ伝えました。
そしたら社員の皆さんだけで施策を考えて目標を達成したんですよ。しかも、目標を大幅に超える数字を。私から方法論を渡さずとも、みんな何をしたらいいのか、それぞれわかっているんですよ。

ただ、会社のシステムや暗黙の了解などに縛られて、力を発揮できなかっただけなんです。
そういった社内にある本来は必要のない慣習をなくすことで、持っている力を発揮することができます。


ー素晴らしいですね! ですが、そのためには相当残業されたのでは?


とんでもない! 今までいろいろな会社で働いてきましたが、各社で残業を減らしてきた実績があるんですよ。
私自身、新卒時代からほとんど残業をしないので、毎日7時に帰っています。だって、お腹が空くじゃないですか(笑)。

残業のほとんどはリワーク、つまり、やった仕事に対して、上司から「それ、違う」と言われて、もう1回やるというムダな作業で時間がかかっていることが多いです。
効率的で生産性の高い仕事を意識して努力すると、長時間働けないです。

ちなみに、オークローンマーケティングでは、SJマイタイム制度」という独自のフレックス制度を導入しています。出退勤時間を社員自身で決められ、さらには1ヶ月の総労働時間が120時間(1ヶ月の出勤日を20日間と暫定し、6時間×20日間で計算したもの)超えていれば、100%労働したとみなされる制度です。私が帰る時間は、社内もガランとしていますよ。

自分のプランやアイデアが、マーケットにインパクトをつくる・・・これこそ、マーケティングの醍醐味。

ーマーケティング職を志望する学生が多いのですが、マーケティングという仕事の魅力は、どんなところにあるのでしょうか?


自分が考えたことが、正しかったのか、間違っていたのか、白黒はっきりつけられるところ、じゃないでしょうか。自分のプランやアイデアが、市場に対して、最終的に、非常に大きなインパクトをつくることができる・・・そこに魅力を感じています。


―どんな人がマーケッターに向いていますか?


大学時代、マーケティングのゼミに所属し、統計学を学んだのですが、このときに、数字は自分でも考えてもいなかったことを示唆してくれ、導き出された答が正解であることを知り、その面白さにのめり込んだ経験があります。データやエビデンス、それから経験と、経験から導き出される事実。これらを元に、お客さまのために、何ができるのか。
お客さまに喜んでもらうために、何ができるのか、ということを真正面から向き合う人が、マーケッターとして活躍できると思います。

それから、結果にこだわる人。自分がたてた目標にこだわる。
たとえ達成できなかった場合でも、まあいいじゃない、こういうことができたのだから、とプロセスで満足するのではなく、今の自分に何が足りなくて、次は何ができるかということを考えられる人材が、マーケッターとして成功するんじゃないかと。常に工夫し、あきらめない姿勢が求められる仕事です。


―そうなると、加藤さんのように、豊富な経験がないと、マーケッターとして結果が出せないのではないでしょうか?


そんなことないですよ(笑)。例えばオークローンマーケティングでは、リスクを最小化させ、効率よくヒット商品を量産するためにNPL(New Product Launch)という独自の戦略を導入しています。
これまで、担当者のセンスや経験を頼りに選定していた発売商品をシステム化したことで、新商品の発掘だけでなく、開発した商品をヒット商品、ロングセラー商品に育てることが、戦略として実現可能になりました。

このように戦略をたてたマーケティング活動を行うと効率的にヒット商品を開発できるんです。このような仕組みをつくるのもマーケッターの仕事のひとつです。

「正しいことを正しくやる」。

ーマーケッターとしてご活躍されるうえで、座右の銘となっている言葉を教えてください。


「正しいことを正しくやる」、この一言に尽きますね。

これまで、いろいろな会社でビジネスを成功させてきましたが、あるとき、なぜ、自分は競合他社に勝ち続けることができたのか、考えてみました。
実はそんなに難しいことはしておらず、単に周囲から得た様々な情報を整理し、客観的にみて、正しいと思うことを実行していただけだったんです。
そこで「正しいことを正しくやり続けていれば、競合に勝つ、あるいは優位に立てる」ということに気づいたのです。つまり、負ける会社は、社内のしがらみやその他の理由で、正しいことができていないんですよね。

それからもうひとつ。私、本当に嘘をつけない人間なんです(笑)。つまり、私自身、心の底から成し遂げたいことを語り、それをビジョンにしています。ただ、いつも思うのですが、人間は本当のこと、真実には勝てない。心から思っていることを語れば、必ず人に通じる・・・だからこそ、正しいことを正しくやる、の姿勢が重要です。

常に「今が一番楽しい」と思える、会社にしたい。

ー今後のビジョンをお話しいただけますか?


現在、この会社で、550億円というビジネスを任せていただいていますが、これを社員と一緒に、どこまで大きくしていけるのか。また、どこまでオークローンマーケティングの社員たちを強く賢くできるのか、挑戦し続けたいと思っています。

社員ひとりひとりに「いつが一番楽しい?」と聞いたときに、「一番楽しいのは、今に決まっているじゃないですか!」と言ってもらえるような会社をつくれたら、自分自身も含めていいなと思います。
そして、「オークローンマーケティングって、いい会社だよね。あそこの出身者は本当に優秀だね」と思われるようになったら、リーダー冥利につきると思います。

「個人的なエピソードを語れる体験」をしてほしい。

ー最後に、学生たちへ一言、メッセージをお願いいます。


自分がやった、という経験を、いくつもつくってほしいですね。

最近感じているのは、みんなでシェアしてやりました、というエピソードが多いなという印象を受けます。みんなで協力しあって手をつないでやりました、というのが美徳であることは理解できますが、そのチャレンジが成功したのか、失敗したのか・・・やはり、個人で背負わなかったら、得られる学びの大きさが違うと思います。

自分が語れるエピソードを持てるような体験をすると、聞き手からすると、そのストーリーからいろいろな経験をしたんだなと理解できますから。さまざまなことに興味を持って、主体的に、自分のストーリーをつくっていってもらいたいなと思います。

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