夢中になれる才能。好きを仕事に/クリエイター・オブ・ザ・イヤー眞鍋亮平の〈クリ活〉

夢中になれる才能。好きを仕事に/クリエイター・オブ・ザ・イヤー眞鍋亮平の〈クリ活〉

好評発売中の書籍『クリ活2 クリエイターの就活本』から派生して、さまざまな人のクリ活話をお聞きする本企画。今回は、電通でクリエーティブ・ディレクターとして活躍する傍ら、昨年からNewsPicks StudiosのChief Creative Officerも兼務されている眞鍋亮平(まなべりょうへい)さん。眞鍋さんは新卒で電通に入社、CMプランナーを経てデジタルクリエイティブの領域にチャレンジされました。その後、現在に至るまで社会に影響を与える広告クリエイティブを多く企画します。

2020年の春、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府から全国の小中高校に臨時休校要請が出されました。撮影もままならないなかで撮影方法を変えて実施にこぎつけた、大塚製薬ポカリスウエット「ポカリNEO合唱」も眞鍋さんの手がけられた広告です。不安に包まれた特別な年に、多くの人々に勇気や希望を与えるポジティブなクリエイティブワークを展開し、時代を象徴するニューノーマルなコミュニケーションとしてスピード感をもって対応したことが評価され、2020年もっとも活躍したクリエイターを讃えるクリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞されました。

クリエイター・オブ・ザ・イヤーの受賞を記念して、2021年6月30日に公開インタビューが行われました。インタビュアーは『クリ活2デジタルクリエイティブ編』編集長の大瀧篤さん。眞鍋さんの就職活動の話やデジタル領域に飛び込んだ理由。クリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞された今なにを思うのか。仕事に対するモチベーションの変化や広告クリエイションの魅力について聞きました。

写真:眞鍋亮平さん
眞鍋亮平さん電通 第5CRプランニング局 グループ・クリエーティブ・ディレクター
1997年に電通入社後、ずっとクリエーティブ局。2014年からクリエーティブ・ディレクター。2020年からNewsPicks StudiosのChief Creative Officerも兼務。中長期で展開する耐用年数の長いブランドアドが得意。学校や番組づくり、商業施設の空間・体験設計など、広告クリエイティブの拡張にも手腕を発揮している。主な仕事は、YouTube「好きなことで、生きていく」、ポカリスエット「ポカリガチダンス選手権」「ポカリNEO合唱」、ONE OK ROCK×Honda「#10969GVP」、ニューズピックス 「NewsPicks NewSchool」 など。2016年 One Show Interactive、2021年Spikes Asia審査員。カンヌライオンズゴールド、クリオゴールド、アドフェストグランプリ、ACC賞など国内外の受賞多数。
【 目次 】
OB・OG訪問で目からうろこ
信頼貯金をして、好きを仕事に
挫折があったからこそ活路を見つけた
夢中になれる才能

OB・OG訪問で目からうろこ

『クリ活デジタルクリエイティブ編』編集長の大瀧篤さん(以下大瀧):どのような就職活動をしましたか?

クリエイター・オブ・ザ・イヤー眞鍋さん(以下眞鍋):
就活では積極的にOB・OG訪問に行きました。業界も絞らず、とにかく多くの社会人に会いました。学生の立場だからこそ話してくれる、リアルな会社の情報を聞けてとても有意義でした。実はいまもその時に入手した情報が役に立っています。

眞鍋さん:OB・OG訪問をして良かったのは、自分では強みだと思っていたものが惹きになっておらず、些細だと思っていたものが強みだと気づけたこと。広告会社のマーケティング担当の人に、私が書いたエントリーシートを添削してもらったおかげで発見できました。「面接官は一日50人くらいの就活生に会う。いかに自分を印象付けられるかを重視するべき」とアドバイスをもらいました。テニスサークルでキャプテンを務めていたことをアピールしようとしていた私は、大きく方針転換をすることができました。

代わりに選んだエピソードは、学習塾でチューターのアルバイト中、教師と私と生徒の距離感を縮めるために実施した作戦について。その作戦とは、授業があるたびに配られるプリント用紙の裏側をメディアに変えるというものです。まず学生に小さなカードを配り、そこに面白かった出来事や教師への質問を書くようにお願いします。次にカードに書かれたメッセージの一つひとつに私がコメントを書き込み、配布用紙の裏側に印刷して学生に配ります。雑誌の投稿コーナーのようなイメージです。学生が楽しんで参加してくれて、教師・チューター・生徒の3者間の信頼関係の構築に役立ちました。

また面接トークのバリエーションとして、卒論のテーマの「父親の家庭内での権威喪失」についてもすぐ話せるように準備をしていました。面接官を務める世代の人たちにとってリアルな問題で、興味を持ってもらいやすかったからか、反応も上々でした。

大瀧:
はじめからクリエイティブ職志望だったのでしょうか?

眞鍋:
クリエイティブ職に憧れは持っていましたが、就活時点では「営業職が第一志望です」と言っていました。「自分には無理だ」と諦めていたのです。気持ちが変わったのは無事に電通の内定を頂いたあと。『広告批評』を発行していたマドラ出版が運営する広告学校へ通ったときです。私のアイデアがクラスメートや講師からも好評で、クリエイティブに対して自信が付きました。決定的だったのは、そこで講師を務めていた電通の白土謙二さんや岡康道さんに課題を褒めてもらったことで、「自分にもできる」とスイッチが切り替わりました。ただ最終課題では、私の企画のファンを公言してくれていたクラスメートの方の作品が最優秀賞で、私は佳作だったのです。それがとても悔しくて、自宅で涙を流しながらクリエイティブ職で頑張っていくことを心に決めました。

信頼貯金をして、好きを仕事に

大瀧:新人時代はどんな風に過ごしていましたか?

眞鍋:
テレビCMのプランナーを目指し、入社早々はラジオCMの制作に力を入れていました。なかでも大切にしていた案件は、遊園地のラジオCMです。予算が限られている中で工夫が必要でしたが、企画から演出まで自由にやらせてもらえて楽しかった。たとえば放送禁止ギリギリのネタを盛り込んだり、ラジオではタブーとされている無音の時間をできるだけ長く入れたり。ときには度が過ぎて怒られもしましたが(笑)。仕事を通じて新しい表現の実験を重ねることで、自分の型をひとつずつ身につけていくことができたので、とても良い経験だったと思います。

私がやりたい仕事をするために意識していたことは大きく2つです。1つ目はクライアントからの信頼を獲得すること。やはり、いきなり楽しい仕事をしようとすると思い通りにいかないものです。地味な仕事でも一つひとつ誠実に取り組み、クライアントが「たまには自由にしていいよ」と言ってくれるようにする。仕事ぶりを通して「信頼貯金」をしていくことが、とても大切です。2つ目は「お題に沿った規定演技」と「自分のやりたいこと起点の自由演技」の2種類の提案をすることです。案出しやプレゼンのたびに先輩や得意先に自分の好きなことを伝えておけば、やりたい仕事が舞い込んでくるチャンスを引き寄せられます。

挫折があったからこそ活路を見つけた

大瀧:ターニングポイントになった仕事はなんですか?

眞鍋:
CMプランナーとして携わった「ネスカフェゴールドブレンド」のシネアド広告(映画館のスクリーンで上映するCM)です。当時「違いがわかる人」というタグラインでキャンペーンを展開しており、その一環で映画館のスクリーンでもCMを流すことになり、私が企画を担当しました。内容はCM上映中に映画館がプラネタリウムに変わるというもの。大成功を収め、プラネタリウム目的で映画館にいく人が現れるほどの反響でした。

この仕事がきっかけで、デジタルクリエイティブ(以下、デジクリ)へ興味が湧きました。一般のお客さまに混じって私も映画館へ行きましたが、CMが終わったとき会場が拍手で包まれたのです。自分の考えた企画で人が喜んでいる姿を目の当たりにして鳥肌がたちました。とても、うれしかった。またデジタルを使って体験を絡めた広告をつくりたいと、やる気が湧きました。

またデジタルの世界に自分が挑戦した理由は他にもあります。CMプランナーの一等賞を目指していた20代のときに、絶対的な才能の前に挫折を味わったからです。その才能の持ち主は、先輩の篠原誠さんと後輩の東畑幸多くんの2人。一緒のチームで働いていましたが、毎日のアイデア出しなどを通じて、明らかに2人の才能には敵わないことを思い知らされました。そこで私が選んだのが、デジタルクリエイティブチームへ社内留学することでした。デジタル×CMプランニングの掛け合わせを体得し、違う土俵で勝負していくことを目指したのです。

いま振り返ると、あの時に腐らず別の活路を見いだしてよかったです。デジタル×CMプランニングで旗を立てたことで、多くのチャンスを手に入れることができました。複数の知見があれば、ハイブリットになることができる。無駄なことは一つもないとつくづく思います。逆に言えば、新しいことにチャレンジしなければ成長は止まってしまう。そのため私はコンフォートゾーン(居心地のいい場所)に長居しないよう気をつけています(編注:詳しくは書籍『クリ活』に収録しております。そちらをご覧ください)。

夢中になれる才能

大瀧:クリエイター・オブ・ザ・イヤーの受賞おめでとうございます。受賞の前後で気持ちの変化はありますか?

眞鍋:
受賞前は広告領域外のことに力を入れようとしていました。複数の知見を身に付け組み合わせ、ハイブリット化していく。「一本足打法から二本足打法になったから、つぎは三本足打法、さらにはタコ足打法だ」と。けれども受賞後にその考えが一変しました。受賞したことで広告クリエイターとしての期待を背負い、広告制作と広告領域外の仕事、双方に集中したいと思うようになりました。これからも広告クリエイティブの可能性を社会に示して、少しでも業界に憧れる人たちを増やしていきたいです。

広告制作の仕事



広告領域外の仕事

大瀧:最後に広告業界を目指す学生さんにメッセージお願いします。

眞鍋:
広告業界で働いていくためには、もはやデジクリは必修科目で、デジタルネイティブで渦中にいる学生の皆さんは大きなアドバンテージを持っています。日々生まれるデジタルコンテンツを楽しみながらチャレンジしている学生の皆さんにはチャンスしかないです。

多くの業種のクライアントやメディアの方々、クリエイターの方々と一緒に仕事をすることができるので、「なんでも興味を持つ好奇心と知的欲求」がある人は向いていると思います。私も楽しみながら、探求しています。好きになれること、夢中になれること。それは広告業界に求められる才能の一つだと思います。







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