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レポート

OB・OGを迎え、業界のリアルを知る。広告・デザイン業界研究セミナー〈イベントレポート〉

マスナビ編集部

OB・OGを迎え、業界のリアルを知る。広告・デザイン業界研究セミナー〈イベントレポート〉

12月23日、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(以下、SFC)にて、広告・デザイン業界研究セミナーがオンライン形式で開催されました。今回のゲスト講師は、電通 プランナー 高橋鴻介さん、Takram デザイナー 高橋杏子さんです。仕事内容や業界の魅力、コミュニケーションビジネスの未来について、SFC出身のお二人に語っていただきました。イベントの模様や、参加学生との質疑応答の内容をお届けします。

株式会社電通

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──はじめにお話いただいたのは、電通プランナーの高橋鴻介(以下、鴻介)さん。企画職としてだけでなく発明家としても活動し、数々の個性的なプロダクトも手掛けています。そんな鴻介さんに、仕事内容やデジタルクリエイティブの魅力を語っていただきました。

鴻介:
私は広告の新規領域開拓を担う部署に所属し、プランナーとしてデジタルクリエイティブを担当しています。インターネットの普及以降、広告の領域は変わりつつあります。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌といった、今までの広告の主流とされてきた4マス媒体で商品を訴求するだけではなく、DIGITAL時代の行動様式を的確に捉えながら、クライアントや世の中に対して、今までの広告にとらわれない方法でコミュニケーションすることが求められているのです。

クライアントからの要望は多種多様で、ときには「この飲料を今までにない形で販売したい」「未来の車のデザインを考えてほしい」など、曖昧な相談を受けることも。そのなかで、自分のアイデアを起点に課題解決ができたときは、「アイデアの何でも屋さん」であるプランナーとして最高の瞬間です。ここでアイデアを形にした事例をいくつか紹介します。

どこにいても楽しめる「ARゆるスポーツ」は、肢体不自由の友人と共同制作した、オンラインで運動を楽しめる新スポーツです。顔を動かすだけでプレイできる競技が多く、ビデオチャットアプリと連携することにより、世界中の人と大人数で同時に遊ぶことができます。スポーツの得意・不得意に関わらず、みんなで楽しむことを目的としています。

究極のユニバーサルフォント「Braille Neue」は、プライベートで発足したプロジェクトで、点字と墨字が一体となった欧文・和文書体を開発しました。見える人と見えない人が、同じ場所で情報を共有できることで、両者がつながるきっかけになるインクルーシブな文字です。

──マスナビ事務局で用意した質問や当日学生から寄せられた質問に回答いただきました。

学生:
広告業界の魅力について教えてください。
鴻介:広告業界の最大の魅力は、働き方や新しい仕事を「発明」できることだと思います。私の場合、担当するプロジェクトの共通テーマとなっているのが「今までつながらなかった領域同士をつなぐ」こと。人でもモノでも、デジタルクリエイティブの力で接点を膨らませれば、あらゆることが仕事に結びつきます。きっかけは個人の小さなアイデアであったとしても、やる気次第でプロジェクトを発足し、社会にインパクトを与えることができるのです。

学生:業界で働くなかで気づいたことはありますか?
鴻介:広告業界で働いている人は、みんなポジティブだということです。企画を考えるとき重要なのは「いかに人々を喜ばせることができるか」。そして、それが「クライアントへの貢献」にもつながります。前向きな姿勢で考えた企画だからこそ、社会に良いインパクトを与えることができます。さらに、考えたアイデアを営業に持ちかけると、営業の方々も「どのクライアントに適した企画か」「どのようなルートで提案すべきか」というのを一緒に考えてくれます。職種に関わらず、働く人全員がポジティブであるからこそ、成果につながっているのだと思いますね。

学生:企画を考える上で気をつけていることは?
鴻介:自分のアイデアが持つ影響力について、多面的に考えるようにしています。面白さだけではなく、クライアントが長期的な効果を得られること。そして自社がきちんと利益を得られること。これらが両立できなくては、仕事としてはサステナブルではないと思っています。ただし、ときには利益を度外視してでも、クライアントや社会が幸せになること優先し実行する企画もあります。より多くの人を幸せにすることが、巡り巡って会社を成長させてくれると信じています。

株式会社Takram

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──続いては、Takramのデザイナーである高橋杏子(以下、杏子)さんです。大学院政策メディア研究科を修了し、在学中にチームで開発した文具「すっきりとした単語帳」が「KOKUYO DESIGN AWARD 2015」にてグランプリを受賞。同賞の審査員を務めていたTakram 代表取締役の田川欣哉さんと出会いを機に、2017年より同社へ参画されています。そんな杏子さんに、同社での仕事や業界の魅力をお話いただきました。

杏子:
Takramは東京のほかにロンドン、ニューヨークに拠点を持ち、世界を舞台に活動しているデザインファームです。私たちに求められているのは、「ビジネス」「テクノロジー」「デザイン」の三要素を結び付けること。さまざまなキャリアを持つメンバーが連携し、幅広い案件で実績を残しています。

業務としてはクライアントワークが多く、企業からの相談のみならず、官公庁の案件に携わることもあります。基本的には、課題を明らかにする「リサーチ」、抽出されたインサイトを基にした「コンセプト構築」、そして最終的なアウトプットに落とし込んでいく「具現化」という流れで、クライアントとともに思いを形にしています。ここで私が携わった事例をいくつか紹介します。

セルフモニタリングツール「モニシア」。PMSに悩む方々をサポートするサービスやデバイスなどを開発しました。就寝中に体温を記録できる体温計とアプリを組み合わせたこのサービスは、クラウドファンディングで多くの方々から支持されました。リサーチフェーズで行った患者へのインタビューを1本の動画にまとめたのですが、これがクライアント社内の性別を超えた共感を生む一助となり、プロジェクトが大きく前進しました。クライアント内部のコミュニケーションを助けることもデザイナーにできる一つの仕事だと実感しました。

J-WAVE ブランディングプロジェクトとして、開局30年を迎えたJ-WAVEのミッションやバリュー、VI(ビジュアルアイデンティティ)といった企業のアイデンティティ全体の刷新をサポートしました。それに向けて社内向けのワークショップも実施し、これからのビジネスやミッションについて内部での意識統一を促進しました。

──マスナビ事務局で用意した質問や当日学生から寄せられた質問に回答いただきました。

学生:
業界で働くなかで気づいたことは?
杏子:鴻介さんと同じですが、前向きな人が多いというのは、私も日々感じていますね、2020年は新型コロナウイルスの流行であらゆる常識が覆されつつありますが、このような状況下でも、働き方や仕事内容をどう変えていけるか、話し合いながら取り組んでいます。また、決まった枠組みにとらわれないことも業界の魅力だと思います。「デザイン」の概念が広いため、あらゆる背景の人が集まっています。自分で自分の肩書きをつくろうという姿勢の人も、周囲には多いように感じます。肩書き探しは「やりたいこと(Will)」「できること(Can)」「なすべきこと(Must)」の重なりを探すようなイメージで取り組んでいます。

学生:活躍している人に共通しているポイントは?
杏子:常に学習意欲が高く、インプットする姿勢を持っていることです。デザインを活用できる領域は日々広がっているので、案件に応じて学び足したり学び直したりする姿勢が重要だと感じます。

学生:デザイナーを目指す上での就活のコツを教えてください。
杏子:この職種を目指す人のほとんどが、ポートフォリオを準備していると思います。コンセプトの魅力を伝えることも重要ですが、即戦力を必要とする会社に対しては具体的に何ができるのか、スキルを記すことも必要だと思います。自分の書類を見てもらえる時間は数分だと考え、内容を端的に伝えられるよう意識するといいかもしれません。