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レポート
広告の可能性を探る! 現役の広告クリエイターへOB・OG訪問
マスナビ編集部
ライバルの就活生に差をつける秘策は誰も聞いていない1次情報を得ること。そのためには、“生”の声を聴くOB・OG訪問がとても重要です。
今回、マスナビ学生編集チームが、現役クリエイターへOB・OG訪問を実施。「広告の広告※」をつくった朝日広告社のアートディレクター・コピーライター・デザイナーに学生たちが話を聞きました。マスナビ生向けに当日の内容をお届けします。
※「広告の広告」とは?
一般社団法人日本広告業協会(JAAA)のPR委員会が行う、広告の理解促進キャンペーン。毎年広告の社会的意義や価値を発信するために、新聞や雑誌などの媒体社の協力を得て「広告の広告」を掲載している。年度ごとに広告会社が持ち回りで制作し、2022年度は朝日広告社がキャンペーン制作を担当した。
OB・OG訪問参加者は写真左から順に以下の通り。撮影時に一時的にマスクを外して撮影を行いました。インタビューはマスク着用、感染予防を徹底して行いました。
・学生インタビュアー
八田裕貴さん(専修大学)
小杉歩実さん(多摩美術大学)
武井玲奈さん(武蔵野大学)
・インタビュイー
朝日広告社、「広告の広告」制作担当
アートディレクター米村俊さん(以下、AD 米村)
コピーライター森尻修平さん(以下、CW 森尻)
デザイナー大山エミリーさん(以下、D 大山)
何者にもなれる面白さがある
広告の価値は? 現役クリエイターが語る
マスナビ編集部:学生の皆さんにお聞きしたいのですが、今回朝日広告社が制作された「広告の広告」を見てどのように感じましたか?
2022年度 「広告の広告」の詳細はこちらから
学生 武井:広告はネガティブに捉えられることもあるけど、勇気づける力があるというような、プラスのイメージを持たせるメッセージにすごく共感できました。
学生 八田:僕もとても前向きな印象を受けました。そして広告のまだ見ぬ可能性を感じることができました。
学生 小杉:一般的に広告は物やサービスの普及を目的としますが、改めて広告の力を考えるきっかけになりました。
AD 米村:ありがとうございます。広告の影響力や広告で心が動く瞬間といった魅力を伝えたかったので、そう受け取っていただけてよかったです。
このクリエイティブを制作した裏側をお話しします。はじめにJAAAから「新型コロナウイルス等で世の中の価値観が変化している今、改めて広告の価値を見つめなおし、業界外の方々に広告の持っている社会的役割・意義を伝えたい」というオリエンテーションがありました。それに対して、僕たちは3つの方向でアプローチを考えました。
1つ目は「社会課題にいい影響を与えられるのも広告」と捉えて、環境問題や紛争問題、経済活動に対する広告の価値にフォーカスしたのです。2つ目は「願望は悪いものではない」という考え方をもとに、人の心を動かす広告の価値に注目。3つ目は、広告は元気がないと思われているかも……という仮説をもとに「広告のアグレッシブさ」を矢印でアピールしました。
CW 森尻:最終的には1案目になりましたが、締めのコピーは「さあ広告には、何ができるだろうか。」と問いかける形を意識しました。これは広告の価値観をみんなで共有し、議論を促したかったからです。
学生 小杉:今回の広告づくりに限った質問ではないのですが、昨今だと、世の中の流れとして広告が炎上するリスクが高まっていると思います。皆さんは広告の炎上リスクについてどの程度配慮して制作しているのでしょうか。
AD 米村:もちろん炎上リスクは理解した上で制作を行わなくてはいけないと思っています。気にしすぎるとアイデアの足かせになってしまう場合も多いのですが、私たちはあくまで裏方であり、炎上したときに矢面に立つのはクライアントですから。
CW 森尻:リスクを承知の上でクライアントがOKを出して炎上したのであれば、それは想定外の炎上ではなく、賛否両論を巻き起こした提言と捉えられます。一番よくないのは、制作側が炎上を予期していないケースです。だからこそ、リスクを察知する感覚や視点をクリエイターは絶対に持っておかなくてはいけませんし、リスクを含めてクライアントと話し合うことが必要だと思います。
D 大山:あと、見て不快に思う人がいるのであれば、その表現は絶対に避けるべきだと私は思っています。その広告を見て、ずっと心に残る傷を負ってしまう人がいるかもしれません。特に差別的な表現などは、制作側も意図せずに行ってしまうこともあると思うので、センシティブな表現の知識もクリエイターは日々アップデートしていかなくてはいけないと思っています。
AD 米村:しかし一方で、炎上リスクが高まり、制約が増えることで恩恵もあります。ある種の制限がある状況はアイデアが生まれやすいからです。
広告が“ウザイ”からこそできること
学生 八田:そういう状況の中で、今後は皆さんどういう広告をつくっていきたいですか。
D 大山:広告って悪いものだという捉え方が今は一般的だと思います。私もネットで調べ物をしていて、関係ない広告が出てくるとイラっとしたりしますから。だからこそ、なるべくどこに出てきても不快に思わない広告をつくっていきたいと思っています。
CW 森尻:ただ広告はウザイものという認識を、逆に利用できるとも思っています。ヤンキーが子犬を拾っていたらいい人に見える理論です(笑)。ウザイという前提だからこそ、心が温まるようなCMはちゃんと刺さる。誰でも発信できる時代に、丁寧につくったものが目立ちやすくなっているはず。そういう広告をつくっていきたいですね。
AD 米村:私は、人をクスっとさせるのも社会貢献だと思っています。社会貢献って大きな活動をイメージしがちですが、そんなに大きなことでなくてもいい。誰かを笑顔にさせたり、少数の人も救ってあげられるような広告をつくっていけたらいいなと。
学生 武井:広告業界を志望している学生に向けてアドバイスをお願いします。
CW 森尻:私は大学生の時にもっとコピーについて勉強しておけばよかったと後悔しています。研究不足だったので就活で「コピーライターになりたい」と自信を持って言えませんでした。コピーライターを目指す学生の皆さんは、広告賞に応募したり、実際に広告をつくってみたりして、準備をしてから、就活に臨むといいと思います。
D 大山:さまざまなことに興味を持つことが大事だと思います。自分の得意分野だけではなくて、興味がなかったものにも学生のうちから触れておくと、社会人になった時に仕事で役に立つことがあるかもしれません。興味のないことに苦手意識を持たないようにしておきましょう。
AD 米村:アドバイスではなくメッセージですが、広告の仕事は、毎回正解がないものをつくるからこそ、正解が何通りもあって楽しい仕事です。また、アイデアを少しでもよくしようとチームでポジティブな会話をしながらつくる楽しさもあります。新人のアイデアも大切にされるので、広告業界に興味がある方はぜひエントリーしていただきたいです。
学生一同:就職活動の話にとどまらず、広告制作の裏側をお聞きできて、新鮮でした。また「一般的な感覚を忘れないようにしている」というお話が印象に残っています。大学生活の何気ない日常の感情の動きを心に留めておこうと思いました。貴重な機会をありがとうございました!
マスナビ編集部:ありがとうございました。今回のOB・OG訪問は記事化して学生の皆さまにお届けします。業界・職種研究に役立てていただけたら幸いです。
マスナビ編集部:皆さんOB・OG訪問は初めてですか?
学生一同:初めてです。とても緊張しています。
AD 米村:僕たちも緊張していますから安心してください(笑)。
学生 八田:ありがとうございます。早速ですが、皆さんにお聞きします。なぜ広告業界を目指したのでしょうか?
D 大山:私はもともとデザインの勉強をしていたので、総合広告会社に入れば、たくさんデザインの仕事に携われるだろうと考えて、目指しました。
AD 米村:私も小さい時から絵を描くのが趣味で、高校でも美術系のクラスがある学校に進学しました。就活で絵を描くことを仕事にしたいなと思ったときに、広告業界が選択肢に挙がりました。
CW 森尻:私はOB訪問で、広告会社のコピーライターと会ったことがきっかけです。その方がいろいろな資料を用意してくれ、忙しい中でも何時間も熱量高く説明してくれました。その優しさといいますか、人間的な魅力に触れて、こういう人になりたいと思ったところから、広告に興味を持ちました。
学生 小杉:入社前に思い描いていた仕事と今の業務でギャップを感じたことはありますか?
CW 森尻:そんなにイメージとは違いませんでした。私はコピーライターですが、予想通りコピーを多く書くことができています。でも、「ずっと書いているわけじゃないんだ」と思ったことはあります。人とコミュニケーションをとる時間も、調べる時間も多い。もちろん、それは悪いギャップではないです。
D 大山:意外と手を動かす時間よりも、頭や足を動かす時間が多いですね。撮影に帯同したり、商品についての調査をするために出張に行ったりと、社内だけ、パソコンの前だけで完結するということはないです。
学生 武井:仕事において面白い点と逆に厳しい点を教えてください。
D 大山:面白いのは、知らない世界に触れることができること。広告をつくるために商品について調べていく過程で、自分の知らない世界を多く学べます。
AD 米村:おじいちゃんになったり、女性になったりと、いろんな立場になったつもりで、想像しますからね。面白くもあり、大変でもあります。
CW 森尻:例えば、お茶のクライアントを担当したとします。自分は普段、水しか飲まない人だったとしても、お茶を徹底的に調べていく過程でお茶のことが好きになったりします。その感覚を大事にしつつ、買わなかったころの自分の感覚も忘れずにコピーに落とし込んでいくことで、いい仕事につながります。
逆に厳しいところは、時間が有限だということでしょうか。常にいくつかの案件を抱えているので、時間がないときやアイデアが出ないときはつらいですね。でもそんな状況でもアイデアが出せたときはうれしいので、厳しさと面白さは表裏一体かもしれません。今の言い方だとハードワークに聞こえてしまったかもしれないですが、そんなことはないですよ(笑)。健全な時間に帰ることはできていますが、限られた業務時間中での生みの苦しみです。
AD 米村:その忙しさも、経験を積んでいくうちに、解消されます。自分がどのくらいの調査時間・思考時間・作業時間を割けばどのくらいのことができるかがわかってきます。目算が立てられるようになると、いつまでに何をやるべきかがわかってくるので、正しく時間を確保できるようになっていきます。