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レポート

インフルエンサーマーケティングとは? 瞬間的なバズではなく、永続的なビジネスを生むマーケティング手法

マスナビ編集部

皆さんが普段から触れているSNSでインフルエンサーをよく見かけると思います。そんなインフルエンサーを活用したマーケティングの裏側に興味を持っている方も多いのではないでしょうか。では実際にどのようなことを行っているのか? 今回はSNSマーケティングの支援を行うナハトで執行役員を務め、同時にインフルエンサーマーケティングの事業責任者を兼任する渡辺智裕さんに、実際の事例をもとにご説明いただきました。

SNSとインフルエンサーの特性を理解

——インフルエンサーマーケティングとは何ですか?

YouTubeやInstagram、TikTokなどのSNS上で活動する影響力のあるインフルエンサーを活用して、商品やサービスを宣伝する手法です。インフルエンサーは自身のファンといえるフォロワーに対する影響力が強く、購買行動に大きな影響を与える発信ができます。その中で、一口にインフルエンサーマーケティングと言っても方法としてはさまざまです。例えば、企業がインフルエンサーに対して商品と報酬を事前に渡し推薦してもらうスポンサーシップ。インフルエンサーがSNSで購入サイトのリンク付きで商品を紹介し、リンク経由で商品が売れた場合に報酬が発生するアフィリエイト。企業の目的や予算などを踏まえて、ターゲット層への直接的なアプローチやブランド認知度向上に活用しています。


——インフルエンサーマーケティングを活用して、企業の成長に貢献することができた事例を教えてください。

ある企業のD2Cブランドの商品開発からインフルエンサーマーケティングでの認知度や購買意欲の向上まで、一貫して伴走しました 。元々「自分たちが納得して売れる商品をつくりたい」という思いがあった中で、既に取引があった企業さまから新たにD2Cブランドを立ち上げるお話をいただき、商品開発から携わることになりました。SNSマーケティングのノウハウの提供にとどまらずに、いままでの経験から培ってきた「売れる商品とは?」という目線もフル活用しましたね。コンセプトとしては、「ドクターズコスメ×低価格×韓国ブーム」をかけ合わせた商品です。商品の特徴を踏まえたインフルエンサーマーケティングを行い、継続的に売れる仕組みづくりを構築しました。

——インフルエンサーマーケティングで商品の魅力を伝えるときに意識していることは?

SNSは「衝動買い」がキーワードです。いかにSNSの閲覧から「買いたい」と瞬発的に思わせるかが大切です。そのために意識していることは大きく分けて3つあります。


1つ目は適切なインフルエンサーの選定。商品のコンセプトなどを入念にリサーチしたうえでフォロワー層がマッチするかを判断し、起用を決めます。先ほどの事例でいうと、商品コンセプトからターゲットを20代後半から40代くらいに絞ったうえで、韓国やドクターズコスメのイメージにマッチする方という視点で選定しました。日頃から韓国コスメなどを紹介している方やハイクラスで美容にも興味がある自分に投資をしている方などですね。フォロワー層に商品コンセプトに興味のある方がいるのか、が購買までつなげるうえで特に重要だと思います。


2つ目は時間軸の意識。いきなり「これいい!#PR」とおすすめされても、唐突すぎてフォロワーは置いてきぼりになりますし、「買いたい」とは思えないですよね。だからこそ、インフルエンサーの私生活に商品が馴染むように、段階的に投稿していく時間の流れが必要なんです。商品との出会いから初使用のレビュー、継続的に使用したうえでの実感・効果と道のりがわかると、商品が違和感なく受け入れやすくなります。


3つ目は商品ページの設計。購入までの導線をスムーズにすることが大切です。先ほどの事例ではドクターズコスメという特性を踏まえて、美容クリニックでの取り扱い実績や商品を使用しているインフルエンサーの紹介、使用方法、メリットなど購入検討者が気になるポイントを盛り込んで離脱者を減らしています。


——それぞれの媒体(YouTube、Instagram、TikTok)の特徴と選定方法を教えてください。

YouTubeは初期と比べると過激なコンテンツが少なくなり、みなが安心して見られるように マスメディア化しています。例えると第2のテレビのようなイメージです。さらに視聴者維持率も上昇してきています。これはYouTuberの視聴者層が段々と固定化されていることに起因しています。他方で、Instagramは直接リンクを貼りつけられるストーリーズが導入されたことがまさに革命でした。発信者が気軽に動画を投稿できることから、購入までの導線がつくりやすく、商品を日常に落とし込めます。TikTokは、YouTubeやInstagramと比較すると人やトークというよりもコンテンツがメインな媒体。新参アカウントでもアルゴリズムを理解すれば視聴回数が伸ばしやすくクリエイターが参入しやすい反面、ユーザーは短い尺で流し見要素が強いため、商品の訴求には工夫が必要です。


先ほど紹介した事例では、InstagramとYouTubeを活用しました。Instagram ではストーリーズでインフルエンサーが日常的に商品の使用感を紹介。また視聴者維持率の高いYouTubeでは、「ドクターズコスメ」という説明が必要な商材を長尺動画でわかりやすく解説。紹介したい商品やサービスを元に「各媒体のどの利点を活用すれば一番魅力が伝わるのか」を意識しながら、媒体を見極める必要があります。

——インフルエンサーマーケティングを活用することでどのような結果が得られましたか?

他の商品よりも1.5倍程度CVRを高めることができました。韓国の美容クリニックでも取り扱っているドクターズコスメがオンラインで簡単に購入できるという新鮮さ。そしてユーザーの購買意欲を高めるページ設計へのこだわりが、うまく作用したと考えています。ただ、商品自体の露出が増えるほど、新鮮さは徐々に薄まっていくため、今後はキャンペーン設計などを利用し、継続的に売れる仕組みをつくっていく予定です。

属人的なマッチングの重要度高まる

——インフルエンサーマーケティングはバズを生み出すイメージがありますが、渡辺さんとしてはどのように考えていますか?

正直、個人的には「バズる」という言葉はあまり好きではないんです。「バズる」と言うと、瞬発的な結果を出すイメージだと思います。例えばある飲食店が提供する一品をインフルエンサーがバズらせたとします。そうすると、このバズった商品だけを消費して帰っていくという一時的な効果にとどまり、持続性のある効果にはつながりにくいと考えています。一時的な効果だけでは企業が継続的にビジネスを発展させていくことにはつながりません。クライアントの商品を一時的な消費対象として「バズらせる」のではなく、継続的な商品購買につなげる仕組みを一緒につくり上げていく役割を担わなければならないと考えています。

——インフルエンサーマーケティングという市場が今後どうなっていくと考えていますか?

企業とインフルエンサーの間にマーケティング支援会社が立って、属人的なコミュニケーションができないと、良いものをつくれなくなっていくのではないかと感じています。近年は企業とインフルエンサーを直接つなぐプラットフォームのようなマッチングを提供している会社もあります。ただ、それでは両者ともどのように接していいかわからず、インフルエンサーマーケティングの効果を最大限発揮できるとは言いがたいです。企業とインフルエンサーの間に立ち、消費者のトレンドを理解したマーケティングの知識をもって介在価値を生み出していくことが、支援会社の重要な役割なのではないでしょうか。


以前はインフルエンサー側が希望する商品を我々が取ってきて宣伝してもらう流れで行われていました。そうすると、インフルエンサー側の主張が強くなりやすく、クライアントの求める表現に応えられないことも多かったんです。しかし、本来であればお金を出すクライアントの目的をかなえることが前提でビジネスが成り立っているはず。そこでナハトでは、クライアント側の希望を元に、適切なインフルエンサーを選定できるようにビジネスモデルの構造を見直すことで、現在は継続的にクライアントの商品をアピールする体制ができています。


また、インフルエンサー側もただいろいろな商品のPRに関わるのではなく、自身のブランディングに合った一つの商品を継続的に宣伝していくことができます。イメージを下げることなく中長期的なブランディングができることにもつながっています。このように適切なマッチングを図ることによって、クライアントとインフルエンサー双方にとって有益なPRになることを心がけています。


単発的な打ち上げ花火ではなく、持続可能な成長につながる手助けをすることこそ、インフルエンサーマーケティングの醍醐味だと思いますね。

——最後に学生へのメッセージをお願いいたします。

SNS/インフルエンサーマーケティングは、正解が必ずあるわけではありません。だからこそ自分なりに仮説を立て、「何が良いのか」を自分で見つけ、意思決定をしていく必要があります。正解がないからこそ勇気をもって挑戦する人がこの仕事では求められています。


また自分の生活の中で触れたすべてを活かせる業界でもあります。日々いろいろなものに触れて、「なんか良いな」という抽象的な気持ちから、具体的な「良さ」を発見して仕事に活かしていけるのはとても面白いことです。「SNSやインフルエンサーに詳しくないからできない」なんてことはないので、興味があるならぜひ挑戦してみてください。

インタビュイープロフィール

渡辺智裕さん 株式会社ナハト IF事業本部 取締役

1996年生まれ、福島県出身。2018年に代表の安達に誘われ創業メンバーとしてナハトにジョイン。23歳でインフルエンサーマーケティング事業を統括し事業成長に貢献し、数年で約50名の組織へと成長させる。現在は執行役員を経て取締役として、“価値のあるインフルエンサーマーケティング業界”を創っていくというビジョンを掲げ、メンバーの育成やさらなる組織拡大を進めている。