失敗を恐れず、チャレンジをし続ける/アジャイルメディア・ネットワーク 上田怜史さん(後編)

失敗を恐れず、チャレンジをし続ける/アジャイルメディア・ネットワーク 上田怜史さん(後編)

人々が生み出す“好き”という気持ちやユニークなアイデアを大切にし、その価値を世界に流通させることで「小さな経済」を成長させ続けるアジャイルメディア・ネットワーク。

昨年上場も果たし、今後もますます活躍が期待されています。2014年から代表を務める上田怜史さんは自分がやりたいことを実現するために転職。その原動力についてじっくりお聞きしました。

写真:上田怜史さん
上田怜史さんアジャイルメディア・ネットワーク株式会社
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 代表取締役社長

商社にて建材を取扱い設計事務所や大手建設会社への営業活動に従事。

外資メディア企業でのアドセールス、DeNAにて「モバゲータウン(mobage)」の企画セールスを経て、2007年アジャイルメディア・ネットワーク株式会社、2009年取締役、2014年代表取締役社長に就任。2018年東京証券取引所マザーズへ上場。

企業のファン育成・活性化を推進するマーケティング支援を国内外で行う。
【 目次 】
ファーストクライアントは元得意先。
1年で黒字化宣言。背水の陣で臨んだ社長職。
「普通の人である」ことが一番の強み。
柔軟性とチャレンジ。常にチャレンジする場を提供したい。
自分の感覚を大切に。ピンときた会社で成長を。

ファーストクライアントは元得意先。

前編はこちらから


――入社当時はどのような会社でしたか?
アジャイルメディア・ネットワーク(以下、アジャイル)に入社して、まず驚いたのが、月の売上額が50万もなかったこと。クライアント企業や商品、サービスのファンを育成・活性化を推進する事業に将来性を感じて転職したのに、「これはヤバい、とんでもないところに来てしまった!」とかなり焦りました。

ところが、入社初日に祝電を送ってくださった前職のお客様のところへ翌日ご挨拶に伺ったところ、「モバゲーのときにすごくお世話になったから、上田さんの新しい取り組みにも興味があるし、応援したい」といって話を聞いてくださり、さらに「上田さんへのご祝儀です」と言って、即決で1800万の発注をくださったのです!

入社2日目で、会社のヒーローになっちゃいました(笑)。

建築業界の慣習と変わらず、「一生懸命やっていると、見積もりに書かれていない項目で評価される」体験が再びできました。

――それはすごい入社祝いですね。
一方、私自身も、「何か新しいチャレンジをして、頑張っている人のファーストクライアントになりたい」と思っています。直接発注するケースもありますし、当社より関係値のあるお客様にしっかりと伝えて受注を取り次ぐといったサポートをしていますね。



1年で黒字化宣言。背水の陣で臨んだ社長職。

――アジャイルメディア・ネットワークの社長にはどのような経緯で?
結局、アジャイルは創業以来、7年間赤字が続きました。

ですが当時、新事業として始めたばかりの「アンバサダー・プログラム」に、若干ながら手応えを感じ始めていました。そこで、1年で黒字基調に転換するという約束のもと、社長に就任。

クチコミから生まれるコンテンツの利用価値を実証するためには、事業の黒字化が大前提だと考えたからです。ファン一人ひとりとつながり、ファンみんなが喜んで「アンバサダー」となり、自ら価値を伝える……。まさにこの事業でビジネスモデルを変えるんだ、という意気込みで一気に舵をきりました。

周りからは無理だと言われ続けましたが、1年間で事業を黒字化させ、その後、160社が導入する当社の主力サービスへと発展、上場を果たすことができました。

「普通の人である」ことが一番の強み。

──一年で黒字化はすごいですね。黒字化できた上田さんの強みとはどういった点ですか?
お話しすると、いかにも順調そうに見えますが、失敗もたくさんしています(笑)。

だけど、今、目の前のことを深く、知識が足りなければ時間をかけてじっくり取り組む、という基準を大切にしています。時間を使うことに関して割とリミッターが外れやすいので、人よりいっぱい量をやってカバーするタイプ。

「普通の人である」ということを自覚していることが、自分の一番の強みだと思っています。


――「普通であることを理解する」意外な強みでした。そう思う上で大切にされている言葉などはありますか?
座右の銘をあげるとすれば、「盆を極めて非凡に至る」です。

この言葉が好きなのは、地道な努力や取り組みがすごいところにたどり着くことを教えてくれていること。これまで、BtoBの建材からBtoCの広告まで、新しい環境や新しいチャレンジをしてきましたが、その都度、自分なりに頭でっかちにならないように活動し、話を聞きながら積み上げるよう心がけてきました。

こういうことは、ちょっと時間をかけて丁寧にやれば誰でもできます。つまり、情熱を傾けられることに対して正しく努力すれば、誰もが道は拓けると信じています。

柔軟性とチャレンジ。常にチャレンジする場を提供したい。

――上田さんはどのような学生と働きたいと感じますか?
採用目線でお話しすると、ビジョンやミッションみたいなカルチャーフィットはとても大切ですが、謙虚に学ぶ姿勢や柔軟性も大事です。会社や世の中がどんどん変わっていくことに対して、柔軟性をもって受け止め、前向きに取り組めるかどうかがポイントです。

若い人には積極的にチャレンジしてもらい、失敗したり成功したりといった経験を早くしてもらいたいです。

私自身もそうでしたが、新しいことにチャレンジしても、売上に結びつかなかったら失敗…というスナップショットで見られがちです。でも、あの失敗があったからこそ、この発想がうまれたというナイストライもあるものです。

当社は、そこを理解し、チャレンジの機会を提供できる場でありたいですね。今夏で5人目になりますが、出戻り社員が活躍しています。

外で経験を積んだ人たちが、我々の新しいチャレンジを魅力に感じて、また一緒に取り組んでくれるのは非常に幸せなことですし、中にいる社員にとってもいい影響があります。戻ってきた彼らが成功するようサポートしてあげたいと思っています。

自分の感覚を大切に。ピンときた会社で成長を。

――最後に学生の皆さんにメッセージをお願いします。
世の中にはたくさんの会社がありますが、どの会社が自分に合うのかわからず、不安にもなるでしょう。

ひとつの基準になるのが、「ピンとくるかどうか」ではないでしょうか。

抽象的に聞こえるかもしれませんが、その感覚はあなたが今まで生きてきて体験したこと、読んだ本、観た映画、影響を受けてきたさまざまな情報と選択の連続から導き出されるものです。私の場合は、バレーボールをやるために、中学校卒業と同時に親元を離れて暮らしたこと。そして旅。本を読むのも好きなので、いろんなジャンルの本を読みました。

就職活動では学生時代の経験を振り返り、「自分がどういう人間であるか」を、採用者に伝えなければなりませんが、周りの評価ではなく、自分の感覚を大切にし、深掘りしていったらいいのではないでしょうか。

そして社会に出たら、失敗を恐れず、いっぱいいっぱいチャレンジしてください。

私自身も今後、これまで積み上げてきた経験やアイデアを、他の経営者を応援するために活用し、世界中のファンの気持ちや行動を後押しする事業を社のみんなと展開し、個人としても大きく成長したいです。

共に成長しましょう。

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