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レポート

メンタルの乱高下が激しい就活におけるセルフコントロール術 ─ 就活を成功させるための心理テクニック 第10回

橋本之克さん

メンタルの乱高下が激しい就活におけるセルフコントロール術 ─ 就活を成功させるための心理テクニック 第10回

近年大注目の「行動経済学」。不合理な生き物である人間を、心理学と経済学を用いて分析する考え方で、マーケターが消費者インサイト(消費者自身が気づいていない本音や動機)を捉える際にも参考にするメソッドです。就職活動も人の不合理な判断が少なからず起きてしまいます。判断を誤らないように、行動経済学を用いて就活対策をするならば──。

第10回は、「結果に一喜一憂してしまう就活でメンタルを良好に保つには」「すり減っていくモチベーションを上げるにはどうすればいいか」について。目の前の就活だけでなく、将来の仕事から実生活にも役に立つ、就活を成功させるための心理テクニックをお伝えしていきます。(マスナビ編集部)

イチロー選手から学ぶメンタルケア

終了時期が決まっておらず、進め方も多様な就活においては、自分のメンタルをより良く保つよう自身をマネジメントする必要があります。セルフマネジメントの手本は、さまざまなところにあります。一流のアスリートにならうのも一つの方法です。

2021年のメジャーリーグ、投打二刀流で大活躍した大谷翔平選手に先立って、アジア人史上初のシーズンMVPを獲得したのが、イチロー選手です。日米通算28シーズンをプレーし、2019年に45歳で引退しましたが、通算安打数4367本はギネス認定の世界記録です。

彼が打撃において目指した記録には、人がモチベーションを管理するためのヒントが隠されています。長距離ヒッターではないイチロー選手のようなバッターを評価する指標として、最も一般的なものは「打率(=通算安打数÷打数)」でしょう。プロ野球においては年間の打率トップの打者を「首位打者」と呼びます。イチロー選手は日米通算で9回も獲得していますが、本人は「打率」より「安打数」が目標だと公言していました。

この二つの指標には大きな違いがあります。「打率」の特徴は常に上下することです。3割をマークしていても、翌日が4打数1安打ならば、確実に「打率」は下がります。一方の「安打数」は、打てば必ず上がる指標です。

実は人間は、一連の物事において、時間の経過とともに満足が拡大することを好む傾向があります。行動経済学ではこの心理を「上昇選好」と呼びます。イチロー選手自身が意識していたかはわかりませんが、「安打数」を目標にすることで「上昇選好」が働き、常に高いモチベーションを維持できた可能性があります。

就活においても、この知恵を活用することは可能です。設定する指標によってモチベーションをマネジメントできるはずです。例えば……

この続きは、新刊『なんで?を解き明かす行動経済学が導く 納得就活~就活を成功させるための心理テクニック~』で読むことができます。
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経験則が足かせになることも

このほかにも就活を合理的に進めるために、知っておいてほしい心理があります。以前に、OB・OG 訪問などしなくても、ネットで十分な情報を得られると思い込んでしまう「コントロール幻想」の危険性を解説しました。

このほかにも情報収集において、「経路依存性」の悪
影響を受ける可能性があります。これは、現在の行動が過去に用いられていた仕組みや方法に縛られる現象す。例えば、皆さんが勉強などで情報収集を行う際には、ネットで済ませることが習慣となっているかもしれません。ネット上には、調べきれないほどの膨大な情報があり、これまでの経験から無意識にネットで十分だと判断する人も多いはずです。しかしながら就活において、情報収集をネットだけに絞るのは危険です。

実際に企業に出向いて……

この続きは、新刊『なんで?を解き明かす行動経済学が導く 納得就活~就活を成功させるための心理テクニック~』で読むことができます。
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第1回「ゼミやサークルを優先して、就活を後回しにしてしまうのはなぜ?」を読む
第9回「なぜ就活では“軸”が大事なのか」を読む
第11回「最初に決めた志望業界に固執してしまう理由」を読む


著者プロフィール

マーケティング&ブランディングディレクター/昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員 橋本之克さん
東京工業大学社会工学科卒業後、読売広告社、日本総合研究所を経て、1998年アサツー ディ・ケイ入社。戦略プランナーとして金融・不動産・環境エネルギー等の多様な業界のクライアント向けに顧客獲得業務を実施。2019年独立。現在は、行動経済学をビジネスに活用する企業向けのコンサルティングや研修講師を行う。また企業や商品に関するブランディング戦略の構築と実施にも携わる。著書に『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』(秀和システム)、『世界最前線の研究でわかる! スゴい! 行動経済学』(総合法令)ほか。