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レポート

最初に決めた志望業界に固執してしまう理由 ─ 就活を成功させるための心理テクニック 第11回

橋本之克さん

最初に決めた志望業界に固執してしまう理由 ─ 就活を成功させるための心理テクニック 第11回

近年大注目の「行動経済学」。不合理な生き物である人間を、心理学と経済学を用いて分析する考え方で、マーケターが消費者インサイト(消費者自身が気づいていない本音や動機)を捉える際にも参考にするメソッドです。就職活動も人の不合理な判断が少なからず起きてしまいます。判断を誤らないように、行動経済学を用いて就活対策をするならば──。

第11回は、「志望業界の変更にまつわる葛藤や無意識のバイアス」について。目の前の就活だけでなく、将来の仕事から実生活にも役に立つ、就活を成功させるための心理テクニックをお伝えしていきます。(マスナビ編集部)

認識と現実のギャップに無意識に苦しむ心理

イソップ童話の『すっぱい葡萄』を読んだことはありますか? キツネが高い所にあるブドウを食べたくて跳び上がります。けれども、何度試しても届きません。そして最後には「どうせ、あのブドウはすっぱいんだ」と捨て台詞を吐き、立ち去るのです。

このキツネのように、自分の認知と異なる矛盾を抱えた状態や、その時に感じる不快感を行動経済学では「認知的不協和」と呼びます。この状態に陥った人は「認知的不協和の解消」を試みます。時には矛盾のとらえ方を都合のいいように変え、あるいは過小評価します。キツネの場合は、自分が跳んで届かないはずがないという認識と、ブドウを食べられない現実という矛盾を抱えます。そこでキツネはブドウがすっぱくておいしくないに決まっていると考え直すことで「認知的不協和の解消」を図るのです。

就活においても……


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筋の通った人と見られたい

ここまで解説した「認知的不協和」は、自分の心中の矛盾をなくそうとする心理でした。しかし人間はこのような状態を望むだけではありません。他人から見ても一貫した自分であろうとする無意識の心理が働くのです。

例えば「フット・イン・ザ・ドア」と呼ばれる営業テクニックがあります。言葉の由来は、営業社員が家を訪問して交渉する際に、玄関の外側からドアの内側へと足を入れる様子です。この営業手法は営業社員が、最初に小さな要求を承諾させた後に要求内容を増やし、最終的には大きな要求を承諾させるという方法です。顧客が営業社員の要求を一度受け入れると、その後も受け入れ続けるべきだと思い込むのです。顧客の心の中で「一貫性の原理」が働いた結果です。

身近な例では、簡単な商品PRのメルマガに登録した後で購入に至る顧客の心理に「一貫性の原理」の影響があります。またスーパーで勧められた試食品を食べた後で、それを買う顧客の心理にも影響しています。

就活において皆さんは「一貫性の原理」の心理的影響を受け過ぎないことが重要だと思います。例えば……


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著者プロフィール

マーケティング&ブランディングディレクター/昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員 橋本之克さん
東京工業大学社会工学科卒業後、読売広告社、日本総合研究所を経て、1998年アサツー ディ・ケイ入社。戦略プランナーとして金融・不動産・環境エネルギー等の多様な業界のクライアント向けに顧客獲得業務を実施。2019年独立。現在は、行動経済学をビジネスに活用する企業向けのコンサルティングや研修講師を行う。また企業や商品に関するブランディング戦略の構築と実施にも携わる。著書に『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』(秀和システム)、『世界最前線の研究でわかる! スゴい! 行動経済学』(総合法令)ほか。